桜の舞い散る木の下で…

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あの日から更に5年…私は自分に残る違和感を払拭する為に大きな決断をし、それを終えて帰国した、勿論、胤也君とは未だ再会する事もなく、建前上女である事を自慢出来るけど、それはあくまで擬似的な物で、真相は男の子のまま、唯一私を苦しめて来た男の子と言う性別には別れる事が出来たけど、元男性と言うレッテルは残る。 だから、今望むのは、何かを切っ掛けにあの時の約束相手である胤也君に再会しない事とそのまま彼と再会する事なく私の生涯が終わる事 再会なんてしたら私は苦しまなければならなくなるからそれだけは避けたいと望んだ。 だが… そんな甘い考えを神様は見逃してくれなかった。 その日、懐かしい友達と会う約束で学生時代に良く集まったファミレスへ行くと、その友達の座る横に見た事のある様な男性がいた。 「有栖川胤也(ありすがわつぐなり)です、お初にお目にかかります…黒田とは大学のサークルで知り合って以来の友人で、今回同級生と会うらしく紹介がてら付いて来た次第です」 「まぁ、そんな訳だから双葉宜しくな!」 「黒田君…ちょ」 黒田将臣(くろだまさおみ)は中学校時代からの私の中では知り合いなんだけど、当の本人は親友の様に感じているらしくそれ以来高校卒業まで一緒だった奴、勿論、彼は私の事情なんて知らない…小学校に入った時から私が女の子として扱われて来たからね…一度告白もされたけど、私には胤也君との約束と想いがあって丁重にお断りした。 でも、まさかこんな形で胤也君と再会するとは思いもしなかった、世間はせまいなぁ…と感じた一瞬。 「黒田君…あとは誰が来るの?」 「瑞樹と明美、それと数馬…」 「何時も一緒だった面々じゃない、私は関係ないのになんで呼ばれたのかしら?」 「何って…親友だろ?俺とお前」 「私はそー思ってないんですけど…私の中では黒田君ナンパ師だもん」 「ばかゆーなよ、俺は何時でも大真面目だぞ!」 2人の会話にクスクスと含み笑いする胤也君…でもさ…これはかなり不利な状況だよね…黒田は兎も角明美は私を名前呼びしてるから、バレたらやだなぁ本当に…。
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