桜の舞い散る木の下で…

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「とりま座れって明美!」 「あら、クロちゃんにカズちゃんに瑞樹まで…そちらのイケメンは?」 「有栖川胤也です、黒田とはサークル仲間です」 「クロちゃんの…へぇ、私!西条明美、宜しくね…んー…あー君」 「へっ?」 「すまん有栖川…こいつ昔からアダ名呼びするのが日常でさ有栖川だからあー君なんだと思う」 「なーる…随分と天真爛漫な人だね、西条さんは」 取り敢えず揃った段階で乾杯をする面々…だけど、ふと視線を感じたのは胤也君から…皆んな20歳を理由にお酒を頼んだけど、私はお酒がこの身体に与える影響を考えて烏龍茶を頼み、胤也君も何故かお酒以外の飲み物を注文していた。 何となく… 1時間位した頃、話の切れ目を機に私は席を立つ 「どーしたの?ゆずちゃん?」 「あ…うん。用事思い出したの、今日は帰る」 「えーっ!折角の再会なのに…」 「ごめんね…それじゃあね」 私が帰ろうとしたのは胤也君からの視線が気になっての事…明美が来てからと言うもの胤也君はかなりの頻度で私を見ていた、何かに気付く前に彼の前から立ち去りたくて席を立った。 更にトドメが彼の一言。 「昔ね、凄い可愛い子と出会ったんだ…名前は西条さんの言うゆずちゃんて子、今、探してるんだ」 仕掛けて来たのか偶然か…胤也君はそんな昔話の一環で女の子の話をした、これはもう私がここに居たらダメだと感じた一言、だから早めに彼が思い出す前にこの場を立ち去りたくなった。 「じゃあね!黒田!それから皆んな!」 私は自分の分の会計金をテーブルに置くと軽く手を振って店を後にした。 「はぁ…ヤバいヤバい、あの場のあの空気はちょっといらんないよね」 少しでも早く、少しでも遠く… 何時もより早足で通りを駅に向けて歩く私。 後少し… そんな時に腕を誰かに掴まれた。 「だれ?」 振り向けばそこに居たのは胤也君、走って来たのか少し息を切らしてる。 「ちょ…ちょっと待って」 「はい?」 「確認したいことが…」 「何です?」 胤也君は必死な形相で私を制し腕を捕まえたままで聞いて来た。 「似てるんだ…あの子に」 「あの子?」 「うん、昔、俺が大好きだった女の子に…君が」 「多分、人違いよ…私は貴方を知らないもの」
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