3人が本棚に入れています
本棚に追加
「とりま座れって明美!」
「あら、クロちゃんにカズちゃんに瑞樹まで…そちらのイケメンは?」
「有栖川胤也です、黒田とはサークル仲間です」
「クロちゃんの…へぇ、私!西条明美、宜しくね…んー…あー君」
「へっ?」
「すまん有栖川…こいつ昔からアダ名呼びするのが日常でさ有栖川だからあー君なんだと思う」
「なーる…随分と天真爛漫な人だね、西条さんは」
取り敢えず揃った段階で乾杯をする面々…だけど、ふと視線を感じたのは胤也君から…皆んな20歳を理由にお酒を頼んだけど、私はお酒がこの身体に与える影響を考えて烏龍茶を頼み、胤也君も何故かお酒以外の飲み物を注文していた。
何となく…
1時間位した頃、話の切れ目を機に私は席を立つ
「どーしたの?ゆずちゃん?」
「あ…うん。用事思い出したの、今日は帰る」
「えーっ!折角の再会なのに…」
「ごめんね…それじゃあね」
私が帰ろうとしたのは胤也君からの視線が気になっての事…明美が来てからと言うもの胤也君はかなりの頻度で私を見ていた、何かに気付く前に彼の前から立ち去りたくて席を立った。
更にトドメが彼の一言。
「昔ね、凄い可愛い子と出会ったんだ…名前は西条さんの言うゆずちゃんて子、今、探してるんだ」
仕掛けて来たのか偶然か…胤也君はそんな昔話の一環で女の子の話をした、これはもう私がここに居たらダメだと感じた一言、だから早めに彼が思い出す前にこの場を立ち去りたくなった。
「じゃあね!黒田!それから皆んな!」
私は自分の分の会計金をテーブルに置くと軽く手を振って店を後にした。
「はぁ…ヤバいヤバい、あの場のあの空気はちょっといらんないよね」
少しでも早く、少しでも遠く…
何時もより早足で通りを駅に向けて歩く私。
後少し…
そんな時に腕を誰かに掴まれた。
「だれ?」
振り向けばそこに居たのは胤也君、走って来たのか少し息を切らしてる。
「ちょ…ちょっと待って」
「はい?」
「確認したいことが…」
「何です?」
胤也君は必死な形相で私を制し腕を捕まえたままで聞いて来た。
「似てるんだ…あの子に」
「あの子?」
「うん、昔、俺が大好きだった女の子に…君が」
「多分、人違いよ…私は貴方を知らないもの」
最初のコメントを投稿しよう!