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でも実際は思い出の筈の事が20年間頭の片隅に焼き付いたままだ、単なる思い出は年を重ねる度にどんどん思い出では済まなくなり、また会いたいと思う気持ちが強くなって行った。
胤也は今だからこそ思う…
あの思い出は思い出じゃなくて初恋だったのかも知れないと。
「桜の丘…そっか!」
胤也は確信が持てた、あの桜の大木の下で…彼女はそう言い残して行ったのだと…
そして…
胤也は翌日、電車に乗ると2人の思い出の地、桜の丘を目指した。
同時に約束の場所で…と言い残した柚季も来るか来ないか解らない胤也と逢う為に桜の丘を目指した。
「これで終われる…全てを彼に伝えてこの約束を白紙に戻して、そーすればスッキリする、私も…彼も…そう!ちゃんと終わらせなきゃ!」
桜の丘…それは凡そ15年前に2人が出会い、約束を交わした場所、今はこの場所に別れを告げる為に来ている。
何かある度にこの場所へ来て泣いたり笑ったりと柚季はこの場所に並々ならぬ思いを持っている、初めて『好き』という感情が芽生えた場所、初めて真実を知り泣き崩れた場所、その身体にメスを入れ女性として帰国して最初に来た場所、今またその場所で15年の歳月に終止符を打とうとしている。
先にこの場所へ到着した柚季は桜の終わり散り際の美しさを見上げて見ている、シーズンが終わろうとしているこの大木はある意味自分の心情と同調するし終わらせるには最高の演出だ。
大木の幹に触れて呟いた
「本当…色々だよね…」
……と。
ふと物音がしたと思いその方向に視線を落とすと、その先に小さく人影が映る…胤也君だ。
徐々に大きくなる胤也の姿を見ながら、柚季は右手を胸元にあてがい1つ大きく深呼吸をしてから身構えた。
「待たせたかな?」
「大丈夫…待たされてはないし心構えするには十分な時間だったよ」
「そか…」
胤也が何年振りかに桜の大木を見上げる
「ここは昔と変わらないんだね…この大木何歳なんだろ?」
「500年見たいよ樹齢」
「マジか…それは大先輩だ」
「うん…そーだね…」
中々切っ掛けを作れない胤也を見ながら柚季は微笑しながら自分から話し始めた。
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