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「マスター……。
………先生は、いつこの世を去ったんですか?」
「去年だよ…。去年の秋に……」
ずっとどこかにいると思っていた先生は、この空で繋がっていると思っていた先生は、もう半年近くも前にその足跡を消していた。
また涙が溢れてくる。
「…………君が来店してきてから、君の様子をよくあいつに話してたんだ。息を引き取る時、言ってたよ…。
『元気そうでよかった。
…最後に君の担任になれてよかった、ありがとう』って……」
先生。私も先生の最後の生徒になれて嬉しかったよ。
楽しかったよ…。幸せだったよ…。
「マスター…。
この写真、いただいてもいいですか?」
「いいよ。持って帰りな」
「ありがとうございます。
先生のことも、ありがとうございました」
お礼を言って外に出た後、咲夜が「大丈夫か?」と訊いてきた。
「大丈夫。急にごめんね」
謝った後、そよ風が吹く。
どこからか、桜の木が揺れる音が聞こえた。
先生。聞こえてますか?
手紙、読んだよ。
ありがとう。私のことを想ってくれて。
先生の特別になることはできなかったけど。
桜を見に連れて行ってくれたあの日。
あの日だけは、先生も敬語とか注意しなかったよね?
その日だけ、先生の特別になれたと思っていてもいいですか?
次に出逢えたその時は、ずっとあなたの『特別』でいたいです。
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