春の神

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「今年も諦めて帰るしかないのでしょうか」  妹神が心配そうに姉神を見上げる。 「一昨年は、起きてきてくださいました。 何より、先代様はこなしておられたお勤めです。私どもが易々と諦めてはなりますまい。 大丈夫、まだ夏の神がいらっしゃるまで時間はあります」  姉神は、勝ち気な目を優しく緩めて笑みを浮かべ、穏やかに言って聞かせた。  そして二人は、お互いに励ましつつ、案を出し合いながらあれこれ策を練った。  山裾に広がる木々や草花に手を借りもした。風や雲からも声を掛けてもらった。  それでも尚、山の神の反応はない。  姉妹が途方に暮れ始めた時、突風が二人を襲った。悪戯好きで知られる風の神が、協力した駄賃を寄越せと、からかって小突いて行ったのだった。  風の神にとっては些細な冷やかしのつもりだったが、経験の浅い少女たちにとってそれは思いもよらぬ惨事。  特に、何事もゆったりと構えがちな妹神には対処しきれるものでなく、その風に、大切な神の羽衣を山奥深くへ飛ばされてしまった。
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