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驚くほどすんなりと、その言葉が出てきた。今喋ったのは俺なのかと疑うほど。
「……それは、色々とすっ飛ばしすぎなんじゃないかな」
「美幸が言う?」
「それはまあ、そうだけど……」
「ダメかな?」
「……だから、だめだってば。言ったでしょ? 私のからだのこと」
「うん。わかった上で言ってるよ」
子どもがほしくないわけじゃない。ただ、俺はそこまで子育てしたいとか大家族を築きたいとかそんな願望はない。めんどくさそうだしな。それよりも俺は、今美幸と一緒になりたいと思ったんだ。
「純平は分かってないよ。あのね、私はいま25歳なの。18歳の時には既にできにくいって言われてたのに、今の私じゃ……。もしあの時、純平が応えてくれていたらまだ可能性はあったの。だから私は……」
「ごめんな、美幸」
「ち、ちがっ……! 純平は悪くないの! ごめ……」
俺は、美幸を抱き寄せた。その手にはつい力が入ってしまう。美幸は特に抵抗することもなく、すっぽりと俺の腕の中におさまっている。
「ごめんな、俺が馬鹿だった。美幸のこと、何も知らなかった。知ろうとしなかった」
「そんなの、純平が悪いんじゃない。私が悪いの」
「さっきまでは俺のせいにしてたのに?」
「あ、あれは! 言葉のアレよ……」
俺の胸に顔を埋めながら、ゴニョゴニョと何かをぼやいている美幸。その姿が、妙に愛らしくてつい抱き締める力が強くなる。
「い、痛い……!」
「あ、ごめん」
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