ある夏の日に

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春樹は生まれつき、他人の肌に触れると、その人のその瞬間の感情や、それにリンクする記憶を瞬時に読み込んでしまう、特殊能力を持っていた。 春樹自身はずっとそのことを特殊な事とは思っていなかったが、他の人はそんな事が出来ないという事を、5歳になった今では、何となく理解し始めていた。 知らない人の日常も、悲しみも、自分の中に入ってくるのは楽しい事ではない。 できれば、知らないであげたいと思っていた。 さっきの事は、春樹にとって少しだけ、不測の事態だったのだ。
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