ある夏の日に

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男の子はそのうち、細い首をいっぱいに伸ばし、水を飲もうと頑張り始めた。 けれど、あと僅か届かない。 つま先立ちになり、背を伸ばし、それでも足らずに今度は小さな舌を出して水を求めた。 その様子があまりにも可愛らしく、山村は男の子の横でクスクスと笑い声を漏らした。 驚いたのだろうか。姿勢を戻し、キョトンとした顔でその子は山村をじっと見上げてきた。 「飲みたいかい? おじさんが抱っこしてあげるよ」 男の子の了解も待たず、山村はその子の脇に手を入れると、足でレバーを踏みながらヒョイと抱え上げた。 その体は人形かと思うほど、とても軽かった。 放射する水にその子の口を近づけてやりながら、山村はその軽さに、訳も分からず打ちのめされた。 白いベランダに、ふわりと揺れるテルテル坊主。 血の気の引く映像が、何者かの悪意のように脳裏をすり抜けた。 スッと肩の力が抜け、山村はまだ僅かしか水を飲んでいないだろうその子の体を地面に降ろした。 再びクルリとした薄茶の瞳が、不思議そうに山村を見上げてくる。
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