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5話 北の大地の不良少年
少年の名はマサトといった。
かつて日本と呼ばれていた国に生まれた時には既に世界はONIに支配されていた。
文明が失われていった中で情報が錯綜し、北海道にはONIがおらず平和だとされていた。
その風説を信じた彼の両親らと一緒に、海を越えて北の大地へやって来た。
人間が住居に暮らすことを忌み嫌うONIは船室のある船での移動を許さず沈没させられてしまうため、屋根なしの船で帆を広げて風の力や人力で船を漕いで海を渡る。
当時、風説を信じた人間が数多く港に訪れていた。
混雑していたため同じ便に乗ることは困難で、両親と彼の船は異なっていた。
彼の乗った船は無事に北の大地に到着したが、以後両親と会うことはできないままでいる。
無法状態になっているため人間同士の中で悪質な詐欺が横行し、騙されて別の国に連れて行かれたり、船の作りが手抜きだったりして途中で海に沈むことなど日常茶飯事だったため、彼の両親がどうなったのか彼自身もわからないでいる。
少年である彼は独りで生き延びるために見知らぬ子どもから食べ物を強奪した。
すぐにそれが地元の不良グループの耳に入り、彼はその集団に取り囲まれた。
彼と同世代くらいの年齢で構成されている不良グループは彼の命を奪うつもりで襲いかかったが、喧嘩が強い彼には誰も勝つことができなかった。
また彼には不思議な人物的な魅力があり、不良グループのリーダーが一目を置き、彼は不良グループの一員になった。
不良グループのメンバーは彼も含めて、まるで時代錯誤のような昭和風の学ラン姿に身を包んでいる。
彼らは時に自警団のような役割を果たし、ONIが支配し無法地帯となった北の大地で地元民を人の悪行から助けるために行動することもあった。
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