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6話 裸のアイドル
季節は春になり雪がだいぶ溶けてなくなっていた。
正午過ぎ頃、マサトが町を歩いていると同じ不良グループのメンバーが3人で何か下世話そうな話をしている。
マサトが彼らに声をかけるとその中の一人が一軒のONIの住宅を指差して言った。
「あそこの家では飛び切りの可愛い子が裸で飼われているんだ。この頃外に出たそうな感じで窓辺の方から外の様子を見ている。そろそろここのONIが放し飼いにするんじゃないかと思って最近いつも暇さえあればここに来てしまう。」
もう一人のメンバーが再びそのONIの住処を指差して大声で叫んだ。
「おい!マジかよ!噂をしてたらまさかのタイミングでドアが開いて飼い人の子が外へ飛び出して来てるぞ!」
更にもう一人のメンバーがその女を見て言った。
「これはあかんやろ。昔ならアイドルでもおかしくないくらいの可愛い子が裸で外に出てきてるなんて。飼い人は毎日お風呂にでも入ってるのか清潔そうで綺麗だなぁ。」
不良グループの中でも独りよがりで愛想も悪いが、どこかに正義感も持っているマサトが言った。
「あの子を放っておいたら変な輩に何されるかわかったもんじゃない。俺らで守ってやらないと。いくぞ。」
辺りには人もONIもいなかった。
男4人で裸の少女を取り囲むが、女性の方には警戒する様子が見受けられない。
それを鼻の下を伸ばしてスケベそうな顔で見ているメンバー3人のことなど眼中にないといった様子で少女はマサトの方を向いて口を開いた。
「あなたは野良人だけどすごい人ね。一度会って話がしてみたかった。うちのONIもあんたのことは知っている。多分この辺に住んでいるONIたちもそろそろ気付き始めている。できるだけ近いうちにここを離れて、瞑想修行をしているような本物の僧のところを訪ねなさい。あなたはもしかしたら人類を救うことになるかもしれない。」
少女は一方的にそう言い終えるとマサトの反応も確かめずに振り返り、元来た住居へと帰っていった。
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