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8話 暗闇の登山
夜更けに空理とともに山を登るマサトは足元すらおぼつかない状態だった。
空理は自分の足音を頼りに後を付いてくれば大丈夫だという。
しかし空理の足音は平面を走っているかのような速さだった。
マサトは斜面の岩や砂に足を取られながらも歩き続けるのがやっとだった。
やがて聞こえている足音が小さくなっていき、空理を見失う訳にはいかないとマサトは必死に駆けながら斜面を登る。
辺りが暗闇で何も見えないためマサトには自分が山を登っているのか下っているのかの感覚すらわからなくなっている。
それどころか空理の足音がありえない速さでマサトの前方や後方からも聞こえてくる。
困惑しているマサトに対して、空理は足音を耳で聞くのではなく、足音を認識しているという感覚がどこから来ているのかについて意識を集中してその心の赴く場所へ進めと伝える。
マサトは言われた通りにやってみるが空理の足音が四方八方から聞こえてくるようになり訳がわからなくなる。
それでも無我夢中でマサトは自分が走っているのかさえわからなくなりながらも感覚的に、その足音の本質が理解できたような気持ちになる。
その時、マサトの目の前には幻覚かどうかもわからない一筋の光が差し込んできて、その光が照らす道のりを駆け上っていく。
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