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9話 高次元空間
暗闇の中で空理の足音を夢中で追っていたマサトは、その一筋の光が照らしている道のりへと向かって駆け出し、やがてその光に触れた途端に、光の中へと飲み込まれる。
気が付くとマサトの目の前には見たことがない不思議な空間が広がっていた。
地面はまるで空撮した写真を敷いているように、空からの視点が平面になっていて、マサトはその上に立っていた。
マサトのすぐ前に立っている空理がここでは慎重に行動して大きな声を出さないようにマサトに伝える。
そしてその場に座りゆったりと心を落ち着かせて、心の目で遠くを見渡すような感覚を持つようにと言った。
空理が座禅を組んで座るとマサトも見よう見まねで同じように座禅を組んだ。
マサトが目を閉じて意識を集中させていると空理が「今だ!そのタイミングで目を開いて見ろ。」と言った。
マサトが目を見開くと、遠くにいる様々な人間の姿が見えた。
それはマサトにとってはほとんど記憶にはないが懐かしい感じがする電灯の明かりや活発な人々の充実した生活の様子だった。
それらの人々はほとんど全員若くて美男美女揃いだった。
みんな楽しそうに過ごしていて、中には夜の営みを行っている男女の姿もある。
そんな光景の中に、たまに地面がスライム状に膨らんだりうごめいたりしているのが見える。
マサトは自分が見えた光景の一部を小声で空理に伝えた。
空理はそこで驚くべきことを口にする。
この空間にいる人間こそがONIの本当の姿であり、地面をうごめいているものが我々人間なのだと空理は言った。
修行をすれば、もっと遠くにいるONIや人間を見通せる千里眼が得られるのだという。
そうすればマサトの両親がどこにいるかわかるかもしれないと空理は言った。
マサトの集中力が途切れて、地面の平面が立体的になるとそれまで見えていた空間は消えて、マサトと空理は山の頂上にいた。
マサトは信じられないという思いとともにその事実をなんとか受け入れて、いつか両親を探し出したいと心に誓った。
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