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1話 戦争
それは突然変異かもしれなかった。
初め、その種族はある国のゴーストタウンで発見された。
大規模な都市開発が行われた後に財政破綻し手付かずとなった無人の街で、既に数百体が棲み付いていた。
その生物を秘密裏に保護して研究しようと国の機関が動いたが捕獲することはできなかった。
その一方で画像がインターネット上で拡散されると世界中が騒然となった。
その容姿は日本の昔話に出てくる鬼に似ていることからONIと名付けられた。
世界中からその生物を生け捕りにしようと様々な分野の人間が訪れた。
その中にはONIの命を奪ってでも捕獲するのを厭わない戦闘や軍事のプロフェッショナルの姿もあった。
しかし誰もONIを捕まえられる者はいなかった。
ONIはその名前の通り、赤みや青みを帯びた人間より巨体で強靭な肉体を持つが、それに加えて特殊な能力も持っていた。
ONIは人間に触れることもなく遠くからでも気絶させたり命を奪うことができる。
その神通力のような能力によって誰もONIに直接触れることすらできない。
ならばと遠方から銃撃しようとしたり空から爆撃しようとするがONIは恐ろしく勘が鋭く、遠方からも自らが攻撃されることを察知する。
近づこうとする者や攻撃しようする者はたちまち気を失わされてしまったり命を落とした。
次第に捕獲から戦争へと発展し、無人機での攻撃や毒ガスなどあらゆる非人道的な手段によってONIを殲滅させることが目的になっていった。
ところがその選択は誤りだった。
どういう訳か軍の司令部や上官たちが次々と気絶させられてしまう。
世界のどこへ隠れようとも、軍に指示を出す者は意識を失ったり命を絶たれた。
むしろ戦闘行為に走ったことが原因で人間はONIに勝てないことが明確になり、降伏することを余儀なくされた。
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