第2章 思い出したのは

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第2章 思い出したのは

 由輝の親の帰りを待つ間、リビングでおやつを食べようとテーブルにお菓子を拡げた。   小袋に2枚、サブレが入っている。真菜は由輝と二人でサブレを分けることにした。由輝は、手にした袋を見つめ 「2人で分けると1枚ずつだよな。でもこうすれば」   彼は手に持っていたサブレを2枚まとめて半分に折った。 『バキッ』   それを見た真菜は、ビックリした。 「なっ、こうすれば小さいけど2人で2枚だろ。同じ2枚を2人で楽しめる」 屈託の無い笑顔で、由輝は言った。 「プハッ。何それ、2枚って。下の方ボロボロじゃない」   余りの馬鹿馬鹿しさと楽しさで、真菜は噴き出してしまった。大声で恥じらいもなく真菜は、笑い続けた。  こんな馬鹿な行動をする彼が、とても愛おしい。 いつからか解らないが真菜は、由輝が好きだった。 「やはり魔女の呪いには勝てないのだろうか?」と思うほど、由輝しか好きになれない。 笑い疲れた真菜の脳裏を掠めた。 「あれ?前にもこんな事があった」   昔の記憶を探る。 思い出したのは、幼い頃の事。  由輝といつも一緒に遊んでいた。おやつの時間に母から 「よし君と半分こしなさい」 そう渡された2枚入りのお煎餅。それを徐に由輝は、1枚ずつではなく2枚を重ねて半分に割って 「ほらっ」 と、ぶっきら棒に真菜に渡した。その形はボロボロしていて真菜は悲しくなって泣き出してしまった。  忘れていた幼い時の出来事。今と昔が交差した。
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