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第3章 難問
お昼休み、友達と昼食を取っていた。女同士、周りの会話の殆どが、「恋バナ」か、ファッションの事。
今は目下、バレンタインの事で彼女たちの話は持ちきりだ。
しかし、そんなことはお構いなしに真菜は、黙々と母が作ったお弁当を頬張る。一緒に昼食を取っていた友達が徐に質問した。
「真菜は、幼馴染みが好きなんでしょ?告白しないの?」
食べていたご飯が喉に詰まる。慌てて麦茶で流し込んだ。
「なっ、何を急に」
美味しく食べていたお弁当の味が、どこかに飛んでしまった。
「早くしないと、彼を誰かに取られちゃうんじゃない?」
そう言われても、勇気が出ない。もし断られてしまったら、考えるだけで怖い。真菜は、ずっと傍にいるのが当たり前の関係を壊したくなかった。
「え~、どうしたらいいの?」
午後の授業も上の空。突然押し寄せた難問に、数学の授業どころではない。これから起こり得る難問を解く数式が、欲しいぐらいだった。
放課後になっても、真菜は頭が混乱していたが、そのまま由輝の待つ校門へと向かった。
いつもの帰り道を二人で歩く。普段なら他愛ない会話で家路に着くのに、友達の言葉が引っかかって、思うように言葉が出ない。真菜の頭の中は、出来損ないの恋愛数式でいっぱいだった。今日に限って、前を歩く恋人同士の繋ぐ手が、妙に羨ましい。
「なぁ、今年もチョコ作るのか?」
由輝が急に話しかけてきたので、真菜はドキッとした。
「あっ、作る。作る」
心を見透かされないように平然としようとするが、心臓がバクバクと音を立てて鳴り始めた。
「どうした?なんか、お前今日、変」
そう言って、真菜の顔を覗き込む。近距離で見る由輝の顔に、真菜の鼓動がより勢いを増して高鳴る。
「バカ、何でも無いよ」
この状況に居たたまれなくなって、突然真菜は走り出した。
「なんだ、あいつ?」
訳も分からないまま置いてかれた由輝は、呆然と立ち尽くす。その場を逃げた 真菜は、走りながら考えた。
『確かにこのままでは、何も進展もない』
今度のバレンタインデーにチョコレートを渡して、告白しようと決めた。
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