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エイコ(水着)に背中を流して貰って、一日働いてきた父親もかくやの『あ゛~・・・』を発声し、風呂を出れば食事が用意されていた。
「今日はやたらと気が利くじゃないか、何かあったのか?」
「大切なものと言うのは、失って初めて気が付くもので御座います」
「意味が解らんのだが」
「昨日の夕方より、タクト様のお世話をする事が出来ず、それが出来る事がどれだけ私にとって大切な事であったか、それに気が付いたのです」
なるほど・・・解らん。
「昨夜は、タクト様の夜のお世話(健全)ができず、体(力)を持て余し、夜も眠れず、タクト様の事を想い枕を抱きしめて朝を迎えました」
「その、人が聞いたら誤解されそうな言い回しは何とかならないのか?」
「タクト様が悪いのです、この年齢の男性は女性の体に興味深々な筈なのに、一度も誘いには乗って来ていただけませんし」
「いや、俺、妻帯者だし」
「王妃は王妃、妾は妾で御座います」
「そうな、それはそれだ。つまり、他の王族は他の王族、俺は俺だとも言える」
「ぐぬぬぬ・・・」
「王族が子孫を残さなきゃいけないのは解るが、俺は元々王族じゃないから、もし沢山の子孫を残さなきゃならないなら、頑張るのは俺じゃなくてアルトさんだ」
「それは、アルト殿下が浮気をしても、タクト様は何も言わないと言う事でしょうか?」
「それ位の覚悟はあるが、実際そうなったらどうなるかは、ちょっと想像できない」
嫌な気持ちにはなるだろうし、家出するかもしれないな。
「アルトさんの事は信じてるし、アルトさんも俺を信じてくれているって思ってる。だから、俺は彼女を裏切らないし、嫌な気持にもさせたくない」
真剣な顔でそう告げれば、エイコはうっと言葉に詰まった。
エイコはアホではあるが、決して人に害をなす者ではない。
「私のこの気持ちは、どこに向けたらよろしいでしょうか・・・」
「きっとその内、それを俺以外に向ける日が来るよ」
想い慕ってくれるのは嬉しいが、それには応えられない。
俺はエイコの頭を撫でて、溜息をついた。
「エルフの寿命は長いんだろ?長く生きていれば恋の一つや二つする物だ。その時まで、その気持ちは大事にしまっておくと良いよ」
「そうで御座いますね、殿下にお許しを頂けば良いのですね」
そんな事は一言も言っていないのだが、どう解釈したのだろうか?
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