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「いや、大丈夫。」
そう、俺はここでもう一度、渡された物を最後まで読むべきだったのだ。
「それでは行ってらっしゃいませ、貴方の人生に幸あらんことを。」
すっと神様が消えたと思ったら、森の中にいた。
「お前は我が家の恥だ!殺されないだけましだと思え、この屑が!!」
「・・・・・・。」
まず、体が重くて動かなかった。恐らく枷でも付けられて居るのだろう。
それと声が出ない。物理的に声帯を潰されているのか、何かの魔法なのか。
そう言う物理的要因だと思っていた。
しかし横たわったまま視線を巡らせて理解した。
俺は縛られていなかった。やせ細った骨と皮だけの手足に、薄汚れたぼろキレを纏っていた。
要するに、動いたり声を出したりするだけの体力が無いのだ。
認識したとたん、空腹と喉の渇きを覚えた。
虐待されていたのであろう体はもう限界を迎えていた。
(待て待て、転生したばかりでもうくたばるのか!?)
俺を屑と罵った男、恐らく父親はもう既に何処にも居なかった。
ぽつりと、頬に雨が降り注いだ。
(助かる!!水を飲めば声が出るかもしれない!)
最後の力を振り絞って、俺は口を開けた。
乾いた口の中を雨が満たしてゆく。
口内の半分くらいまで水が溜まったのでそれを数回に分けて飲み込む。
「あ・・・が・・・。」
何とか声が出たが、相変わらず体は全く動きそうにない。
今モンスターとかに襲われたら間違いなく死ぬだろう。
勿論このまま雨にさらされ続けても死ぬことになる。衰弱しきった体には負荷が大きすぎる。
「む・・・子供?」
まさに天の声だと思った。
このままあの桃色空間に逆戻りかと、本気で考えていた。
「たす・・・け・・・て。」
「解った、助けてやるから安心しろ。」
そこで意識が暗転した。
まだ魂が体に馴染んでいないのか、目の前は真っ暗になったが、声が聞こえてくる。
数人の話声だ。
「その子供はどうしたんだ?」
「そこに倒れていた。衰弱が激しい。」
「捨てられたのね・・・。」
「とにかく早く安全な所に移動しましょう。」
三人の男と、一人の女の声。
「一度街に帰ろう。この子に助けると約束した。」
「転移で行くわ、捕まって。」
体に魂が馴染んできたのか、聞こえて居た声も段々聞こえなくなってきた。
一瞬の浮遊感の後、俺の意識は完全に闇に飲まれてしまった。
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