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次に目が覚めたのは暖かい布団の中だった。
体に掛けられている毛布が、異常なほど重たく感じた。
「こ・・・こは・・・?」
「おや、目が覚めましたね。今アランを呼んで来ます。」
剣士風の男は部屋を出て行った。
俺は部屋をぐるりと見まわす。
木でできた壁や窓、電球や蛍光灯は無く、机の上には火の着いた蝋燭が置いて有った。
「目が覚めたみたいだな。」
蝋燭の炎を見ていると、ドアの空く音がして声が聞こえた。
「あり・・・がと・・・。」
「気にするな、見つけられたのは偶然だ。」
男が椅子に腰かけて、こちらに顔を向けてきた。
「まずは水だ、ゆっくり飲めよ?」
体を起こして口元にコップを当ててくれる。
俺は言われた通りに、ゆっくりとその水を飲みほした。
「次はこれだ、アスが摩り下ろしてくれたリンゴだ。」
アスと言うのが誰だか知らないけど、有難く頂戴した。
「少しは楽になったか?」
「は・・・い・・・。」
「事情は、話せるか?」
俺は首を横に振ってこたえる。
教えたくても長時間喋る体力がない。
「俺はアランだ。お前の名前は?」
「ガウ・・・リール。」
「そうか、それじゃガウリーと呼ばせてもらうが良いな?」
今度は縦に首を振った。
「よし。ガウリー、お前はなぜ捨てられた?」
貴族が屑と言って弱った子供をモンスターのいる森に捨てる理由なんて一つしかない。
「ま・・・もう・・・。」
「摩耗?・・・魔盲か!!そうか、お前は魔力が無いんだな・・・。」
その分、鍛えれば鍛えただけ強くなるらしいが。
「辛い事を思い出させたな、また明日見に来る。ゆっくり休め。」
アランは俺の頭を撫でて、部屋を出て行った。
(寝よう。)
俺はゆっくりと横になって布団をかぶった。
「ちょっと、良いかしら?」
俺は声のした方に顔を向けた。
「私はアス、アランの仲間よ。」
俺は体を起こして軽く頭を下げた。
どうやら、リンゴを摩り下ろしてくれたのはこの人らしい。
「その・・・貴方は魔盲なんですってね?」
頷いて答えるとアスは俺の頭に手を置いた。
「私は逆に魔力しか取り柄が無かったわ。」
俺は首を横に振ってアスの手を握った。
「やさ・・・しい・・・。」
アスが目を見開いて優しく微笑んだ。
「貴方もね。」
「りん・・・ご・・・あり・・・がと。」
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