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「あ・・・の・・・。」
急に静かになって目が覚めてしまった。
「おや、もっとゆっくりと体を休めて下さい。」
「大丈、夫。」
「そうですか、それにしても凄い回復力ですね、もう体を起こせるなんて。」
「アランさん達の、おかげです。」
だいぶ喋る事が出来る様になってきた。
「ですが無理は禁物です。今のあなたでは猫に乗られただけで死にますよ。」
実際前世の俺はそうやって死んだが。
「自己紹介がまだでしたね、私はカイと申します。」
「ガウリールです、よろしく。」
「ふむ、しかし、捨てられた以上名前を変えておいた方が良いかも知れません。」
確かにな、このままガウリールって名前で生活してたら、きっと俺の父親は俺を消しに来るだろうし、その方が安全か。
「貴方のその黒い髪と黒い瞳は、和の国と呼ばれる国の出身者に多く見られる特徴なのですが、貴方の血縁者に和の国の出身者がおられるのですか?」
「解りませんけど、生まれつき、です。」
「では、和の国の人っぽい名前にしましょう。」
だったら本名の方を使いたい。
だけどここでそれを提案してしまうと、怪しまれるだろう。この日と鋭そうだし。
「昔、一度だけ我々がお世話になった方の名前を貴方にあげましょう。」
カイはそう言って部屋に備えてあったメモ帳にペンで文字を書いて見せてくれた。
『九重 巧翔』
偶然なのかは解らないが、俺の本名がそこには書かれていた。
「ここのえ たくと と読むらしいですよ。倭国の文字はこれしか知りません。」
「ありがとう、ございます。」
「いえ、では私はこの事を皆に伝えてきますので、お休みください。」
カイが部屋を出て行っ他のを確認して、俺は腹筋運動を始めた。が、2回しかできなかった。
「弱すぎ、ワロタ・・・。」
後は手や足を動かしてトレーニングをした。
お陰で何とか立ち上がる事が出来る程度には体は回復したようだ。
「夕食の時間よ。」
アスが部屋に入って来た。
「そろそろリンゴじゃないものが食べたいだろうと思って、スープとパンを持って来たわ。パンをスープでふやかして食べるのよ。」
「ありがとう、お腹、すいてたんだ。」
「ちゃんと喋れるようになってきたわね。」
「これも皆の、おかげだよ。本当に、感謝してる。」
テーブルの上に夕食を置いたアスは、俺の手を握った。
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