贄(にえ)

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日が暮れて、 二人は旅立つ事とあいなった! 「川に小舟が参ります。」 川下から小舟が棹を操り、 二人に近づいてきた! 「昴(すばる)! 菖蒲殿は?」 舟を操る若者が、 声をかけた! 「若様、 こちらに……。 さ、菖蒲殿、 揺れますゆえ、 お気を付けて!」 「この方は?」 「許嫁殿ですよ……。」 「では、私を逃がして下さるのはまことにと?」 「はい……。」 昴と呼ばれた若者が、 にっこり微笑んだ! 小舟が揺れ、 菖蒲は、ふらついた! 「危ない!!」 菖蒲の身体を しっかり受け止めたのは、 許嫁殿だった! 「あ……有難う……。」 この方……見覚えがある……!? 何度か幼い折りに、 遊んだ事が有るような……。 「あや殿、 龍吉(たつきち)じゃ!」 「タツ!?」 幼馴染みの一人で、 隣村のタツと言われていた! そうだったんだ!!
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