贄(にえ)

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「川下は、 村中総出で、 あや殿を探して居る。 川上に行きましょう!」 「はい!」 暗い川で、 松明もつけずに、 月明かりを頼りに遡った。 長者の家では、 舟で商いをやり取りもしているので、 龍吉は、 暗くても棹を操れる。 「あ!」 舟が揺れた! 「ここら辺は、 流れが急じゃ、 しっかり捕まれ!」 ザブン!! 「菖蒲殿!」 昴が、菖蒲を押して、 落とした!? 「なっ!? あやー!!」 龍吉は、 棹を置き、 飛び込んだ! 「旦那様のお言いつけで、 こうする手筈になって居りました!」 昴は、 手を合わせてから、 棹を差して、 その場から離れた。 「若様まで、 落ちなさるとは……。 見なかった事にしよう。」 昴は、 クックックッ……と笑った!
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