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「花手鞠じゃ……。
まるで♪」
そう言って、
クスッと笑う。
「その花手鞠とやらを
お取りいたしましょう!」
後ろから、
ここら辺では見かけない、
見目麗しき若者が、
そういうと、
桜の枝から、
花手鞠を手折った。
「そなたに……。」
「まぁ……。
他の花手鞠は、
手折らすになさりませ。
こちらは、
私が持ち帰りまするよって、
ご安心なさりませ。」
ふわっと風が吹き、
長者の娘も若者も花びらに包まれた。
「そなたは、
この近くに住まうのか?」
「はい、
そこの屋敷の娘菖蒲(あやめ)じゃ。
あなた様は……?」
「しがない旅人じゃ。
旅の道中、
この見事な桜の花を
見かけて、
桜の精のような菖蒲殿に逢(お)うた♪」
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