贄(にえ)

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贄(にえ)

若者は、 村外れの古寺に、 菖蒲を連れて来た。 村人は、 あまりよっぽどの事がないと、 寄らない住職の居ない寺だ。 「ここで、 暗くなるまで待ちましょう。」 「あの……?」 菖蒲は、 急に不安になってきた。 旅の装束が、 一式用意してある!? 「何故にこの様な女物の旅の装束が、 有るのでしょう?」 人さらい? 若者は微笑んだ。 「これには訳がある。 我に菖蒲殿を頼むと、 託したお人が居る。 許嫁殿じゃ。」 「えっ!?」 「許嫁……とはうわべだけの事、 菖蒲殿の本来の許嫁は、 あの川の神様じゃ。」 「何故(なにゆえ)に!?」
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