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……ぜ――は――
ぜ――は――
ぜ――は――
久々ダッシュして吐きそうになりながら家の近くまで来ると、周辺にはゾロゾロと行列が出来ている。
僕は、憂鬱な気分で家の入口を目指す。
大勢の知らない人間が集まる場所には近づきたくないのだ。
他人の目が怖いから。
しかしあの中を通らないと家に入れない。
ライブハウスの隣ではなく、正しくは隣の隣が僕の家だ。
ライブハウスの隣はしょっちゅうテナントが変わるビルで今は
『入居者募集中』になっている。
(今日は確か、V系の
『サド』のライブだったな)
開場の1時間前だが既に客が100人位は並んでいる。
髪が金色やらピンクやら緑やら赤やらのド派手で化粧も唇が黒い女の子達がわんさか居る。
行列で玄関が塞がれているので、恐怖を堪えて言った。
「あ、あのう。通してください」
緑の髪の、二十歳位の鼻ピアス男子が連れの茶髪の女子の肩を抱いてイチャイチャしていたが、僕に気がつくと、
「あ、はい。どぞ」
と、すんなりと場所を空けてくれた。
「あ、ど、どうも」
その時、急に咳が込み上げて来てゲッホゲッホしながら僕はドアを開けたが、
「ゲエッ」
と本当に吐きそうになるまで咳が止まらなかった。
吐く一歩手前で収まったが、人前で変な声を出してしまった事がショックだった。
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