出逢いは悪夢の中で

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「ただいま……」 リビングのソファーでは岳人が座って呑気にスマホをいじっていた。 「おう」 僕をちらっと見て、又スマホを触ってはニヤニヤしている。 「ウッチーが部活に顔出せって言ってたよ」 「あ――……そう。気が向いたら行くって言っとけよ」 気が向く事など永遠になさそうな口調で岳人は言った。 岳人が学校へ行かなくなって半年以上経つ。 岳人は成績も良くてスポーツも出来て顔も良いので人気者だったのだが、ある日を境に登校しなくなったのだ。 母さんも最初は学校は勿論、カウンセラーやら医者やら色々な所に相談しに行ったが、何をやっても何を言っても岳人は変わらなかった。 学校へ行かなくても家で勉強はしているし、フラフラ外へ出かけて万引きしたり家出する訳ではないので、 『もう仕方ない』 と母さんも父さんも諦めたみたいだ。 ただ、学校には岳人の熱烈なファンが多くいて、僕が弟だと知ると 『えっ……似てないね』 『岳人君元気?何で学校来ないのかな?』 『岳人君を紹介してよ?』 等と言われるので、僕は大いに迷惑している。 ただでさえ人が苦手な僕なのに、説明しようの無い質問をされるのは困る。 ましてや 『兄弟なのに全然似てないね』 なんて言われるのは苦痛でしかないし、一種のイジメにも思える。
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