桜の木の下

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「……なんか不思議よね。あんなにキレイな花に、なんでそんな気持ち悪い話をつけたのかしら。」 「そうか?俺は面白いと思うけどな。」 「でも日本人は桜が好きとか言うじゃない。好きなら見たとき、わざわざ気分が悪くなるような話考えないんじゃない?」 「じゃあ日本人は実は桜が嫌いってことか?」 「そういうことじゃないような……」 「考えすぎじゃね?」 「適当ね。あんたはどうなのよ。」 「何が?」 「日本人が桜に変な話をつける理由。」 「うーん……分かんね。」 「なにそれ。」 佳保は興ざめしたように欠伸をしながら図書室の窓を眺める。 俺も釣られて外を見る。 ちょうど窓からは、本校の桜の木が見える。 まだ枝にはなんの彩りもなく、景色をより殺風景にしている。 「そういえば桜ってピンクのイメージだけど、言うほどピンクじゃないのよね。」 頬杖をついた佳保も、桜を見ながらそう呟く。 「確かに。どっちかっつーと白だよな。」 子供がピンク色のクレヨンで桜を塗り潰すのを見て、違和感を感じるのはそのせいだろうか。 「ならその白に、死体の血液が混じってピンクになるのかしら。」 「なるほど、てことは白に近い桜の下には死体がないってことだな。」 頷く俺を見て、佳保は呆れ顔でため息をつく。 「……あんた、ホントに死体が埋まってるって思ってんの?」
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