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海はそのまま学校を出て脇道に逸れ、道のない坂道を降りていく。
佳保をつれたまま。
「海!せめて道歩きなさいよ!」
「……」
海は何も答えない。
ただただ一心に走り続けている。
道はだんだん狭まり、暗くなっていく。
「……」
佳保は見覚えがある気がしていた。
一度通ったことのあるような感覚。
(どこだっけ……ここ…)
考えている内に階段をのぼっていた。
階段は暗い道から、上の明るい隙間に繋がっている。
ずっと手を引かれて本気で嫌がろうとはしなかったが、そこで初めて佳保は、その場所に恐怖心を抱いた。
「海!!待って!!」
「……」
「待ってったら!!」
お構い無しに進み続ける。
いつも本のページばかりめくる海の手を引く力は異常で、止めようとしても無理だった。
遠かった光が近くなって、ついにたどり着いてしまった。
光に目が眩んで、どんな場所かがまだ把握できない。
反射的に目を瞑る佳保の頬に何かが風と一緒にそっと触れる。
少し目を開けて、それを摘まんで見てみる。
「……さく、ら?」
手の上にあったのは小さな花びら。
やけに濃いピンク色の。
再び触れる風に佳保はふと顔を上げる。
「きれい……」
そこにあったのは、早咲き過ぎる満開の桜。
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