駆けるさくら

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「じぃじ、ばぁば、こんにちは!」 玄関を勢いよく開けて、まだ幼い孫がドタドタと走ってくる。 「あぁ、こんにちは。 遠いところ、よく来たねぇ」 顔を綻ばせながら抱き締めると、記憶にあった時よりも、ずいぶん大きくなった感じがして、時の流れを改めて感じる。 「うん!でも、すぐだったよ! 新幹線さくらでビューだったもん!」 手を動かし、新幹線の速さを伝えようとする孫に、 「そうか、それはすごいなぁ」 と、笑いながら返事をするが、心の奥で何かがドキッとした。 「こら雄太!ちゃんと靴を片付けてから入りなさい!」 玄関で静香さんが声を荒げると、孫の雄太は慌てて玄関へと戻る。 しばし訪れる静寂。 それを破ったのは、やっぱり彼女。 「ねぇ、あなた」 ドキッとしたのは自分だけではない。 彼女だってそうだ。 そして、いつまでも春にいてはいけない。 季節は春から夏へ。 夏から秋へ、秋から冬。 そして、再び春へと巡るもの。 もう、あたたかな春に終わりを告げて、太陽の、責めるような厳しい暑さの夏へといかなければならない。
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