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ピィー。
甲高い汽笛とともに、闇に溶け込むようなブルーの列車が、車体を軋ませながらホームに入ってくる。
寝台特急さくら。
自分達を、その名前の通り春の息吹感じる新天地へと運んでくれるはずの列車。
狭い折り戸から中に入り、壁際によった通路を進むと、指定した寝台に着いた。
「ちょっと、狭いね」
少し、落ち着いたのか、はにかみながら言う彼女。
そして、ちょっとばつの悪い自分。
四人で一区画の二等寝台。
せめて、門出ぐらいは豪華に一等寝台をとも思ったけれど、所詮は奉公人の自分にそんなお金はなく、二等寝台が関の山。
申し訳なくて、そして、自分が不甲斐なくて、小さな声が漏れた。
「ごめん」
もう、泣きそうな顔でもしていたのかもしれない。
「違うの!貴方とそれだけ近くにいれるなって」
慌てて言う彼女の必死さが可笑しくて、思わず吹き出した僕に、今度は彼女が口を膨らませる。
そうだ。
確かに狭いけど、それだけ彼女と近くに僕はいられる。
もう、彼女と自分を隔たるものはなにもないのだ。
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