『風の歌』

3/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 ああ、私は覚束ない足取りで、縁側に座る。  暖かな日差しが眠気を誘う。  ああ、私が見つめる掌。そこから、ぽろぽろと、今まで培ってきたものが溢れ落ちていっているかの様だ。  今の境地に至るまで十余年。  ずっと刀を振ってきた。  ずっとだ。  復讐を遂げる為だけに。全ては、こいつ等を皆殺しにする為に。 「……終わった。終わったよ、これで全部」 「は、良かったな。嬢ちゃん。  これで晴れて自由の身だ。明日から好きに生きな」  用心棒の男が、無責任な言葉を投げ寄越してくる。全く、人の人生を奪っておいてなんて云い種だ。  好きに生きろだなんて、今更云われたところで、一体、どうすれはいいと云うのだろうか。  全く、本当に無責任な連中だ。  最後まで。  最後まで無責任な連中だった。  ああ、私が用心棒の男に視線を向けると、どうやら息絶えてしまった様だ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!