薄花桜

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君はいつも黙って頷くばかりであったけど、いつだったか、僕に尋ねたことがあったね。淡い青色の空を指差して、眩しそうに目を細めながら、"どうして、空のような青い色を、薄花桜というのでしょうね"と。 四つ辻の桜の下で、初めて待ち合わせをした時に、続かぬ会話に気を遣ってくれたのでしょう。けれども僕は、正解はおろか、気の利いた返答をすることもままならないほど、緊張していたのです。 初夏の日射しに輝く君の黒髪が、セーラー服の胸元に揺れる真白なリボンが、君の、桜の花びらのような頬が、長い睫毛が、優しげな口もとが、僕には眩しすぎて。 ああ。 僕は、ほんの僅かな間ではあったけれど、君と出会えたことを、心より嬉しく思います。 ありがとう。 ありがとう。 明日、薄花桜のあの空に、僕は飛び立ちます。 君との思い出を胸に。 二度と会うことは叶わない、けれど、僕は、僕の君への想いは、永遠になる。 ああ、君よ。 僕の晴れの出陣を、あの四つ辻の桜の下で、どうか笑顔で見送ってほしい。 優しい君のことだから、僕の命が消えることを悲しく思うかもしれない。けれどもどうか、僕が国の為に命を捧げられることを、僕とともに喜んでほしい。 見ていてください、必ずや敵空母を沈めてみせます。
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