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涙を拭って、凛と背筋を伸ばす。
寒桜も凛と枝を伸ばして、私達との出会いを受け入れてくれている。
時折はらはらと舞う花びらは、
散るというよりもむしろ、地面へと蒔かれる種のように思えた。
花が散って、それで終わりではない。
庭に向日葵が芽吹く頃には、
きっとこの樹は、たくさんの葉を青々と繁らせるのだ。
同じものを見るもうひとつの存在を心に住まわせて、
私の時計はようやく再び、動き始めた。
――遠い、春の日の記憶。
Fin.
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