girl-side

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2月14日当日。 約束してた人と交換したり、そこまで親しくないけれどお菓子を分けてくれた子にお返ししたり、「くれ」と言ってきた男子にあげたり。 あげるために持ってきたので、声をかけてきた人ほとんどにあげた。 「へい、桂木」 とわざわざクラスが違うのに声をかけてきた秋本とかいう馬鹿野郎には思いっきり投げつけてやった。「割れたらどうすんの!?」とか言われたが、責任もって食ってくれ。 朝は紙袋いっぱいに同じ袋が入っていたが、帰りには他の子のチョコでいっぱいだった。 残っているのはクッキーではなくチョコレート。 いや、べつに作ってみただけで、あくまで形として用意したわけで、絶対に渡そうとは心に決めてない。 偶然見かけたら渡すつもりだったけど、クラスが違うので会えなかった。 わざわざクラス訪ねて渡すほどのものじゃないし、だって恥ずかしいし。 部活に行こう。 鞄と紙袋を持って、階段を降りた。 ――その矢先のことだった。 本人曰く癖っ毛らしく、妙にぴよんぴよん跳ねたその髪。 私よりもフツーに身長高いけど、秋本とか部活仲間と並んでしまうと少し小さくみえる身長。 去年毎日のようにみた部活のバック。 井原だ。 さっき自分に言い聞かせた言い訳を思い出す。 偶然、見かけちゃった。 いや、まてまて。井原だって多分これから部活だ。 引き留めちゃ悪い。 でも、今日を逃せば、渡すどころか声をかける用事もない。 『今日』だから、話しかけてもおかしくない。 『今日』を逃したら、話す機会もない。 遠くなっていく久しぶりの後ろ姿。 私は、すぅと息を吸った。
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