boy-side

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ホームルームが終わり、1時間目が始まる前。 教室内の至る所に小さなラッピング袋がみえた。 期待も高望みもしないけど、どことなく浮ついた雰囲気の教室に落ちつかなさを覚えてしまうぐらいには2月14日という日に左右されているらしい。 教室に漂う甘いにおいに、朝練で動いたとはいえしっかりと朝食を食べたのにもかかわらず腹の虫が小さくなる。 数名の女子から何個かもらえたので、ありがたくいただいた。 「あまりないの?あまり。もらうよ?」 近くにいる女子達に秋本がそう言うと、女子達が「まだ食べるの?」と秋本の机を見て笑う。 友好関係が広いというか、なんというか。秋本の馬鹿野郎は去年のクラスメートからも結構な数もらっていた。 そんな秋本とつるんでいると「井原」と名字を呼ばれ、何個かおこぼれをもらった。 「おー、まじで?もらっていいの?」 「形汚いけどね」 「気にしないって。サンキュー」 特に明確な意味もないものだけど、くれるっていうならもらう。 秋本は自ら絡みに行くけど、俺は来るもの拒まずのスタンスだった。 「お前それ全部食べれんの?」 俺が秋本にそう言うと「俺甘党だからヨユー」と自慢げに言われた。 「あ、そお?虫歯に気ィつけてね」 「井原くん、やっさしー」 「気持ち悪っ、鳥肌立つわ」 「ひでぇ」 秋本がけたけた笑う。 楽しそうなこの馬鹿の喧嘩を買ってしまったあの後輩は今頃どうしてるんだろう。 そんなことを考えながら、洋菓子を口に運んだ。
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