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右か左か。
右が箱で、左が袋。
「袋か箱かの違い?」と訊くと、桂木は首を横に振った。
「本命か、義理」
桂木は右、左、の順番で少し上に上げて示した。
箱が本命。袋が義理。
「さぁ、どっちがいい?」と桂木は試すようにこちらに2つのチョコを見せつけた。
「え……左で」
「はーい。ヘタレな井原君には義理チョコをプレゼント」
桂木は右手を引っ込めて、左手の指で摘まんだ袋を俺の方につきだした。
俺は思わず両手を出してしまった。
ってかヘタレって……。いや、あってるんだけどさ?言わなくていいじゃんって思うのはまだどこかでかっこつけたいから。
桂木は俺の動揺がおかしかったのか、笑いをこらえているようだった。
「じゃ、ホワイトデーのお返し、よろしく」
桂木はひらひらと手を振って俺の前から去って行った。
俺は深く息を吸って、ゆっくりはき出す。
もし右を選んでいたら本命もらえたのかなと、どこか後悔しながら部室に向かった。
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