boy-side

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「おー、井原、遅かったな」 「ん?まぁ、ちょっとな」 同じ教室からだいたい同じタイミングで出たのにもかかわらず、俺の方が大分遅れてきた。秋本にそこを不思議に思われるのは仕方ない。 そして、先ほどもらった男が持つには似合わないほど可愛らしい袋を見て「あらら」と秋本がニタニタ笑う。 「なにさ」と俺が言うと、「べつにぃ?」と腹立つ口調で言ってきた。全部分かってるんだろうな、こいつ。秋本の小馬鹿にした表情とその態度に、俺は思わず奴を蹴り飛ばしていた。 「あぁ!?井原先輩なんすかそれ!」と浜田に捕まったが「うるさいうるさい」と適当にあしらう。 「あーそうだ、井原君。桂木さんに会えました?」 秋本が俺に『くん』なんてつけるときはからかってるとき。 この袋を誰からもらったのか、こいつは分かってるんじゃないのか? ってか、他クラスからももらってるこいつはこれと同じものを持ってたっておかしくはないのか。それはなんか腹立つ。 「会いましたけどなにかぁ?」 「ムキになんなよ、面白いから」 「うぜー」 「桂木のクッキー普通に上手いぞ」 「あ、クッキーなんだ?」 「おう。タイムラインにのせてたし」 「あー、お前らがそんな話してたの見たわ」 「ちゃんとホワイトデーに返してあげてね?」と純粋の振りを演じる秋本を蹴り飛ばす。誰のまねだよ、それ。 「んじゃ、先行くわ」と着替え終わった秋本が部室から出て行く。 「……、」 俺は桂木の袋を開けて、中を見た。 そこに入っていたのはクッキー……ではなく、チョコレートだった。
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