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「姫様、ご機嫌をお直し下さいませ~」
余分に用意していたのであろうか、パーティ会場に並んでいるはずの可愛らしいデザートが数個、ルナの前に並べられる。
「兄様と食べたかった…。せっかくオメカシもしてダンスも踊ろうねってお約束してたのにぃ…」
「ひぃ様。これは王女としての第一歩ですよ」
大好きな声がしてパッと顔を上げると、そこには白髪混じりの執事服を着た初老の男が、優しそうな笑顔で立っていた。
「じぃや!」
この男、侮るなかれ。
見た目は非弱そうな老人だが、かつては王の右腕と一目置かれた男である。
王と言っても今は亡きルナの祖父が王だった時の強者だが、現王であるルナの父が立太子した時は自ら武術指南を買って出た程だ。
現役を引退し、今は統括執事だが、人は見かけによらない。
今も口を出すだけだが、ルナとソレイユの武術指南に立ち会ってくれているのだ。
ルナが“じぃや”と呼ぶのは亡き祖父、前王が望んだから。
ルナがもっと幼い時、ソレイユと2人で白髪だから“じぃじ”と呼び始めた為、祖父と分けて呼ばせるため“じぃや”と呼ばせるようになったのだ。
早くに祖父を亡くした2人にとって本当の祖父のように慕っている。
そしてそれは祖父の遺言でもあった。
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