サクラ

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祖父は、穏やかで優しい人だ。 少し痴呆が入ってるのか、時折ボンヤリしたり、独り言を言ったりしているが、人に暴力を振るったり、暴言を吐いたりはしない。 そう思っていた。 でも昔は違ったらしい。 特に祖母に対して酷く、父はそんな祖父が嫌いで、早々に家を出たと言う。 その後、祖母も愛想が尽きたのか、いなくなってしまった。 父は、何故、自分を頼ってくれなかったのか、自分が家を出る時に、祖母も連れて出ていれば、と、後悔している。 祖母の行方は、今も分かっていない。 祖母がいなくなってから、祖父は人が変わったように穏やかになったそうだ。 祖母と同じ名前の木を植え、祖母が帰ってくるよう願いをかけているのか、その木にいつも語りかけている。 僕が知っているのはそんな祖父で、だから僕は祖母の事は何も知らないでいる。
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