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その日の夜、祖父は静かに息を引き取った。
その死を悼むかのように、花が散る。
散って散って。
葬式の日の朝、木はまるで死んだかのように、何も纏っていない骸骨のような枝を伸ばして、沈黙していた。
父に、祖父の言葉を伝えたが、そんな事をすれば売りに出せないだろうと、即座に却下された。
でも僕は、どうしても祖父の言葉を叶えてあげたかった。そこで、祖父の髪を一筋、布に巻いて埋める事にした。
それくらいは構わないだろう。
葬式も終わり、父と母が遺品の整理をしている時に、僕は木の根元を掘った。
余り浅いと、雨で流れてしまうかも知れない。そんな事を考えながら掘っていたら、母に、どれだけ掘るのと呆れられた。
そこで我に返り、結構な深さを掘っていた事に気づく。
僕は自嘲しながら、その穴の底に祖父の髪を置いた。その時、既に何かが埋まっている事に気づいた。
僕はその周りの土を、注意しながら落としていく。
そして父を呼んだ。
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