サクラ

6/6

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
祖母は出ていってなかった。 ずっと祖父と一緒にいたのだ。 そこに埋まっていた、既に白骨化した死体は、祖母のものだった。 頭部に損傷があるのが分かったが、それが致命傷になったのか、他に原因があったのかは、今ではもう分からないらしい。 祖父が殺したのか、事故だったのかも。 それでも祖父は祖母を想い、離れたくなかったのだろう。祖父の、木に向けた視線を思い出す。 祖母もまた、祖父を慕っていたのかも知れない。だから毎年、祖母と同じ名前の木は、祖母の上であんなに見事に咲き誇っていたのだ。 父が目にしていた祖父の暴力。しかし夫婦の間には、それ以上の何かがあったのだろう。 そう、僕は思いたい。 祖父が亡くなってから、木は枯れたかのように、花を付ける事はなくなった。 祖父は今、祖母と共に眠っている。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加