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祖母は出ていってなかった。
ずっと祖父と一緒にいたのだ。
そこに埋まっていた、既に白骨化した死体は、祖母のものだった。
頭部に損傷があるのが分かったが、それが致命傷になったのか、他に原因があったのかは、今ではもう分からないらしい。
祖父が殺したのか、事故だったのかも。
それでも祖父は祖母を想い、離れたくなかったのだろう。祖父の、木に向けた視線を思い出す。
祖母もまた、祖父を慕っていたのかも知れない。だから毎年、祖母と同じ名前の木は、祖母の上であんなに見事に咲き誇っていたのだ。
父が目にしていた祖父の暴力。しかし夫婦の間には、それ以上の何かがあったのだろう。
そう、僕は思いたい。
祖父が亡くなってから、木は枯れたかのように、花を付ける事はなくなった。
祖父は今、祖母と共に眠っている。
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