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男の左側から右側へ。景色はそう変わらず、背中の向こうで車の走る音がする。
隣では次の煙草に火をつけていた。
「お父さんと、どういう知り合いなんですか?」
「同級生」
記憶の中の父の姿と比べると、この男はかなりガラが悪そうに見えた。二人の関係が見えない……。
父はいわゆる童顔だと昔から母が言っていた。「もー、第一印象から可愛くてねぇ」と頬を染める母は恋する乙女のようで。
「仲、いいんですか?」
「……。まぁな」
私の問いに、男は少し間を開けて答えた。理由はわかってる、でもあえて突き詰めない。
早く教えてあげなくちゃ。そう思うほどに言葉が出てこなくなる。うつ向き、スマホの電源を入れて、待ち受けに視線を落とした。
「その写真、どうしたんだ」
男は指先に煙草を挟め、私から遠ざけるように片手を宙に浮かせ、再び聞いた。
待ち受けは見せたくなかった。見せて父の話をしたら、友達と同じように同情した視線を向けてくるのだろうか。そう思うと、隠してしまいたくなる。
でも、もう見られているのなら、仕方ない。
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