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ごめんなさいと、小さく呟いた。
なにが、と男がこっちを見る。
でもすぐにふい、と顔を反らされた。それが私にはまた寂しく思えて、それはさっき感じた感情と同じで、胸がぎゅっと痛んだ。きっと目付きを気にして目を合わせないようにしてる。
煙草の灰が絶妙なバランスで、落ちない。
はじめて会った時にぶつかったのは私が悪かったという事、加えて変態呼ばわりした事を謝った。それから突然泣いたりしてごめんなさい、と。
「あの……怖くないですから、こっち見てください」
そう言ったら、男の広い肩がビクッと跳ねて、白い灰が落ちた。
「もしかして、色付きの眼鏡してるのは、目付きを気にしてるからですか?」
「なんで?」
「それ、度入ってないですよね」
まじまじと見つめるうちに、気付いた。
男は、これだから子どもは素直に言いたい事言いやがって……と頭を掻く。
「そうだよ、御明察。グラサンにした事もあったけど、それはいつもより凶悪度が増すからやめろって千春に言われて……あ」
途中で話をやめた男は、恐る恐るこっちに視線を向ける。
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