桜の木の下で

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雪が降らなくなり、道端に寄せられ固まった除雪の名残が小さくなっていく。 毎年桜が咲く頃になると、天候が荒れて雨が降り、風が強くなる。膨らみ始めた蕾が落ちてしまわないかと、何も出来ないくせに意味もなくそわそわしてしまう。 それでも、桜は必ず咲くのだ。 「ねぇ、お母さん」 並べられた朝食を前に、私は口を開いた。母は洗い物の手を止めて「なに?」と振り返る。 「お父さんて、カメラ持ってた?」 「カメラ?」 小首をかしげる仕草は小動物のような母。高校生の私の隣を歩くと姉妹だとよく間違われる。 父の部屋で写真を見付けたと話すと、母はゆっくりと首を振った。 「お父さん、機械音痴だから。携帯電話のカメラも使えない人よ?」 「あー……そうだね」 今の時代パソコン、スマホが使いこなせないのは死活問題並みに致命的なのに、父は機械との相性が悪かった。
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