超・妄想【桜が登場する物語】

桜の木の下で

登校途中。変えたばかりのスマホの待ち受けを眺めながら、考える。

父の部屋から出てきた写真。機械音痴の父が撮ったのでないなら、他の人が撮ったのかな。部屋の中を探してみたけど、やっぱりカメラは出てこなかった。

この桜をレンズ越しに見つめて、この美しい空間と瞬間をシャッターで切り取ったのは、誰？

それにしても綺麗な写真。賑やかで鮮やかな桜。一番新しかったのもあって、お気に入りに一等賞したのだ。

思わず画面に見入ってしまっていた私の足元は、覚束なかった。何かにつまづいて、もしかしたら何もなかったかもしれないけど、とにかくつんのめって前のめりになった私は、誰かの懐にボスッと入った。

「おいコラ」

「……ふぇっ？」

頭の上から落ちてきた低い声に驚き、パッと顔をあげる。すると薄く色付いた眼鏡のレンズの奥から、私を見下ろす鋭い視線があった。