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「ヨシッ」
意を決してテープをはがすと、
玩具やノート、卒業式に交換し合ったサイン帳など、懐かしいものが並んでいた。
探していた物は、箱の一番奥底にあった。
幾何学模様が描かれたクッキーの空き缶だ。
ふたを開けると友達からもらった手紙の他に、
差出人の違うラブレターが5通入っていた。
兜からの手紙はなく、どの名前も自分が好意を抱いたことの無い相手だったが、
懐かしくなって中身を読み返した。
「ばっかねぇー」子供らしい稚拙な文章に、思わず笑ってしまう。
当時の男子の顔がありありと思い出された。
ラブレターの差出人は、今頃読まれて笑われているとは思ってもいないだろう。
そう考えると気の毒になって、それを捨てることにした。
手紙の他には絵画コンクールでもらった記念メダルや
家族旅行先で買った絵葉書があり、その下にピンク色の平たい箱が入っていた。
「これかな……」
箱を開けるとハート形のチョコが入っていた。
「?」作ったのは普通のチョコレートに
ホワイトチョコでメッセージを書いたもののはずだが、
入っていたチョコは白く、おまけに失恋でもしたかのように、
ハート形の至る所に亀裂が走っている。
「カビ……」
慌ててふたを閉めた。
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