モザイクの経験

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「いつごろ退院できそうなの?」 「一か月ぐらいしたら、顔も足も治るそうです」 「わかったわ。退院したら、また、しましょうね」 穂寿美の言葉に、兜は困惑した。 セックスはしたいが、穂寿美の生々しいそこを見たいとは思わなかった。 初めてベッドを共にした時、そこを見て萎えたのだ。 その時はモザイクメガネという不思議なメガネが 見たくない部分をモザイクで隠してくれたので最後までできたが、 また、メガネを掛けてもいいものだろうか……。 第一、モザイクメガネは手元になかった。 「それじゃぁ、お大事にね。退院したら、連絡してよ」 穂寿美は兜の返事を待たずに椅子を立ち、カーテンの向こう側に消えた。 高齢者たちの世間話が止まる。 「お邪魔しました」 穂寿美の声が消えた後も、病室内はしばらく静かだったが、 蜩が泣き始めるように高齢者たちも話しはじめた。
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