想い出

2/9
前へ
/22ページ
次へ
「あのさぁ、思い出したんだけど」 穂寿美は妹の背中に声をかける。 「なあに?」 背中が返事を返した。 「兜君って、千穂理の初恋の人じゃない?」 千穂理は振り返る。 「そんなことないわよ。初恋の相手はシンジ兄ちゃんだもの」 シンジは2歳年上の従兄だ。千穂理は学校に入る前に、よく遊んでもらっていた。 「そんな子供のころの話じゃないわよ。私が高校1年の時よ」 「私が小学3年ね。10年前だ……」 その頃、誰かを好きになった記憶はなかった。 「バレンタインで手作りチョコを作っていたら、千穂理も作らせろって言って来たわ」 「そんなこと、あった?」 「あったわよ。ハート形のチョコを作って、 ホワイトチョコで何とか君Loveって、書いたもの。憶えていないの?」 「記憶にございません」 千穂理は視線をテレビに戻した。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加