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「あのさぁ、思い出したんだけど」
穂寿美は妹の背中に声をかける。
「なあに?」
背中が返事を返した。
「兜君って、千穂理の初恋の人じゃない?」
千穂理は振り返る。
「そんなことないわよ。初恋の相手はシンジ兄ちゃんだもの」
シンジは2歳年上の従兄だ。千穂理は学校に入る前に、よく遊んでもらっていた。
「そんな子供のころの話じゃないわよ。私が高校1年の時よ」
「私が小学3年ね。10年前だ……」
その頃、誰かを好きになった記憶はなかった。
「バレンタインで手作りチョコを作っていたら、千穂理も作らせろって言って来たわ」
「そんなこと、あった?」
「あったわよ。ハート形のチョコを作って、
ホワイトチョコで何とか君Loveって、書いたもの。憶えていないの?」
「記憶にございません」
千穂理は視線をテレビに戻した。
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