さくら、ふくふく。

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まだ電気がなく、車が走っていなかった時代、ヒルコは、やまのかみ・ミスルと、うみのかみ・ミズコの間に生まれました。 「ミスルさん、ミズコさん、おめでとう。女の子だね。やあ、はじめまして。ぼくは、巨神のウノポノ。きみの、天のかみさまからいただいたお名前は?」 かみさまは、生き物とちがって、生まれたときから人間の大人ができることができ、あらゆるちしきを持っています。 そして、母親のなかにいるときに、いちばんえらいかみさまから名前を告げられます。 それがないかみさまは、ながくいきられないといわれています。(にんげんにも、お母さんのなかにいるとき、いちばんえらいかみさまは、名前を告げてくれています。おぼえているひとはすくないけれど、ひとはみんな、かみさまにしゅくふくされてうまれてくるのです。) だから、かみさまがこどもを生んだときは、ほかのかみさまは、名前をたずねて、そのなまえをよんであげることで、おいわいするのです。 「ヒルコです」 「ヒルコちゃん、これからよろしくね。きみのみぶんは、次の満月に蒼天さま(いちばんえらいかみさま)が決めてくださるから、それまでは、自由にしていてだいじょうぶだよ」 「はい」 あたらしく生まれたかみさまのみぶんは、親のみぶんをひきつぐのではなく、蒼天が決めるきまりになっているのです。 ヒルコは、どんなかみさまになれるのか、わくわくしながら満月の日をまちました。
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