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翌日、大吉の家に、税をとりたてに役人がやってきました。
役人は、大吉のお父さんが、りょうがゆるされていないばしょでりょうをしたため、ふつうの倍の税をおさめるよう言ってきました。
大吉のお父さんとお母さんは、やっとのことでお金をつくり、役人にわたしました。
「だいじょうぶですか」
ヒルコが、自分のせいだと思いながらたずねると、大吉のお母さんは笑顔をつくって言いました。
「いつものことだあ。りょうができるばしょは毎日かわるから、こういうことはしょっちゅうでなあ。でも、おさめた税で、だれかの生活がなりたっているんだから、ほこらしいことだよ。ねえ、お父さん」
「ああ、そうだな」
笑った大吉のお父さんの前歯は上下四本ありませんでした。
そんなにとしはとっていないのにおかしいなとおもってみていると、そのようすに気づいた大吉が言いました。
「おっとうは、おらが、武士の子と遊んでいてけがをさせちまってその子の親にきりすてられそうになったとき、自分を好きなだけなぐっていいから、息子の命だけはたすけてくださいって言ったんだ。それで歯がおれちまって…」
そういうと、大吉は、目をうるませてうなだれました。
「気にすんなあ、大吉、親が子供をまもるのはあたりまえのことだあ。子供のせいちょうをいつまでもそばでみていたいっていうのが親のよくだあ。おらはよくにしょうじきだっただけだあ、きにすんなあ」
「うん!」
大吉は前歯のない顔で笑いました。
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